茶をいただく、こと。

伝統ある地域で経師を訪ねる。古い付き合いのある経師である。行くと必ずお茶が出てきた。厚い銅の茶托に繊細な使い古された茶碗。僅かばかりの緑色の汁がトロッと入っている。茶器を眺め、その使い心地のよさを確かめる。

一息つくと、掛け軸に描かれた文様や書が目に入ってくる。衝立の仕様を確かめる。季節を味わい、生活を楽しむ術がそこここに鏤められている。とても美しく、豊かに。主人の声がゆっくりと響く。ゆったりと、。

「・・・商人のお茶ですわな。これは。」

大切に仕立てられたものを、粗末に扱わないように、して貰いたい、との心が伝わってくる。「よいものはよいのです」言葉がじんわりと体に染み入ってくる。座って心を鎮めて、ものと向かい合ってこそ、初めて、よいものとの出会いがある。心の深い人との出会いがよきものとの出会いに繋がる。お茶とはそうした場を紡いでくれる、薬。薬とは不思議なことを起こす力のあるもの。美味しいことはさも何。よき出会いを紡ぐ、茶はまさに薬である。

普段使いのもの程、慎重に選ぶ。この信楽でも、皆様がよき茶、器に出会えますように。